七夕の国は早すぎたセカイ系批判の書だった!

傑作、寄生獣の作者が次に手がけた作品が「七夕の国」でした。

この作品、今思うと早すぎたセカイ系批判の本だったと思うのです。

セカイ系って言葉でピンとこない人はこの辺の解説を読んでみてください↓
セカイ系 - Wikipedia


七夕の国には圧倒的に強い超能力を持った頼之とその幼馴染の幸子という登場人物がいます。
この二人の関係が、セカイ系の主人公とヒロインの関係そのものじゃないかと思うんです。



頼之は圧倒的な力を持ちながら世界に対してはさほど関心がなく、幸子も力こそありませんが、世界に対して非常に閉じた態度しか示しません。そんな二人は最終的に頼之の持つ、「空間を削り取る力」を最大規模まで発揮し、自分達を丸ごと別の世界に飛ばそうとします。


そんな二人の間に割り込むのが、主人公の南丸君です。彼の特徴は彼自身も超能力を持ちながら、結局普通に生き続けることです。彼の普通ぶりは正直キャラが立ってないのでは?と連載当時はハラハラするほどでしたが、そんな彼が、彼だからこそ、頼之と幸子という完璧なセカイ系カップルを引き裂いてしまいます。



主人公の南丸君が放つ、物語の最後の台詞を引用します。



 「世の中のことテレビでざっと見て、わかった気になったって! そんなのウソだぜ! …中略… 世界は目で見えている大きさの百倍も千倍も広いんだぜ! それに比べりゃコワイ夢も、見えない鎖も、ハデな超能力も小せいよ! ごくごく一部だよ!」



改めて読むと本当に素晴らしい台詞です。
連載当時は失敗作扱いして敬遠していた方ももう一度読んでみると色々発見があるのではないでしょうか。