というわけで無人島に持っていく一枚のレコードを発表するよ。

無人島に持って行きたい〜は何?っていう質問する奴は大馬鹿だと思うよ。 - 枯れた知識の水平思考

↑いや、はてな村の片隅で吠えてるつもりだったのが、こんな反響呼ぶとは思わなかったですよ。正直狼狽しました。でも、書いてある内容は偽らざる本音なんで、今更「釣りでーす」とか言う気もないし、好き放題ぶった切ってしまっていいと思います。

 
 でも、「ネタにマジレスせんでも…」、「それをいったらおしまいでは…」、「単なる比喩だろJK…」みたいな意見は本当にその通りだと思うよ。それでも燻ってる気持ちはあったんで、今回で一気に燃え上がってくれて、オイラの気持ちも無事成仏できそうです。とくに、heatwave_p2p氏はオイラみたいなおしゃべりクソ野郎に懇切丁寧に、質問の成り立ちを教えて頂いて、ありがとうございます。おかげでおしゃクソも蒙が啓かれました。


 んで、今回の件の締めくくりに、nijuusannmiri氏からのリクエストも貰ったことだし、オイラが無人島にもっていく一枚レコードを発表しようと思います。思い入れたっぷりに無人島に持っていくレコードについて語るんで、その手の思い入れ過剰なキモ文が苦手な方はとっとと読むのやめるのが賢明ですよ。


 ではどうぞー。

私が選ぶ無人島に持っていくレコード

 無人島にたった一枚だけレコードを持っていけるのだとしたら、私は、レディオヘッドの「The Bends 」を選ぶ。「OKコンピューター」も「Kid A」も好きだが、一枚を選ぶとしたら、これになる。


 このレコードを聴いていた当時の私は、金銭的にも将来的にも非常に切迫した状況にあり、努力はするものの、その努力が果たして、未来に有効なものなのかという確信もなく、ただひたすらにもがき苦しんでいた。


 そんな時に、無い金をはたいて買ったレコードが「The Bends 」である。私はこのレコードを文字通り擦り切れるほどに聴いた。くる日もくる日も聴いた。あれほど自分が音楽を切実に必要とした時期はなかったし、これほど繰り返し聴いたアルバムは他に無い、好き嫌いというより、自分の身体の一部とか、自分を取り巻く空気みたいな存在だったと言っていいかもしれない。それくらい、当時の自分に、「The Bends 」は響いた。トム・ヨークの憂いをまとった歌声とともに、私の鬱屈した日々は過ぎていった。


 やがて、私は幸運にも恵まれ、自分が望む職に就くことが出来、金銭的にも多少の余裕がもてるようになった。きちんと働くようになって、自分をとりまく状況や、環境は短期間の内に、大きく変わった。


 そして、私は以前ほどには「The Bends 」を聴かなくなってしまった。当時のあの圧倒的な一体感を感じられなくなってしまったのだ。レディオヘッドニート御用達音楽なんて言ったらファンに怒られるかもしれないが、やはり、あの時、あの状況で聴く「The Bends 」こそが私にとって最良の出会いだったのだろう。失ってしまったとはいえその出会いを感謝すべきなのだろう。


 今でも、レディオヘッドは好きなバンドだ、「The Bends 」もたまに聴く、しかし、当時のような響き方はやはりしてこない。人間というものは、確固たる自分などというものはそもそも無く、その時々の状況や環境によって大きく規定されるものなのではないか?という私なりの考え方の端緒はこの時の経験から来ている。



 だから私は、無人島に持っていく一枚のレコードに「The Bends 」を選ぶ。昔の記憶を呼び覚ますためではない、変わっていく自分を確認するためにだ。その無人島が、寒い場所にあるにせよ暖かい場所にあるにせよ。そこに居続ければ、自分という存在は大きく変わっていくだろう、そういうものだと思う。だからこそ私は「The Bends 」を傍らにおいて置こうと思うのだ。変わっていくものと、変わらないものを確かめるために。



いやー、思い入れたっぷりに一枚のレコードを語るのって本当にいいものですね。



補足

当たり前の話ですが、オイラが買ったのはレコードじゃなくてCDです。擦り切れたりはしません。この辺わざわざレコードとかちょっと気取った素敵な感じの言い方しちゃうのが、オイラが無人島レコードに鼻白む理由の一つだってのは蛇足です。