読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ポリゴンというイノベーション〜失敗列伝第三回の補足〜

 1990年代初頭から半ばにかけて起こったゲームの変化は2Dから3Dへの変化という簡単な言葉でまとめられることが多いのだが、そこにはあまりに多様な意味が込められている。単なる映像的な変化以外にも、ROMカセットからCD-ROMというメディア的な変化も同時に起こっているし、バーチャルボーイという、とんでもなく個性的なハードまで生まれたり、結局最も売れたゲームがゲームボーイポケモンだったりと、恐ろしいほどに激動の時期だったのである。これらの一つ一つの変化をつぶさに取り上げて分析し自分なりの見解をまとめていくのがこのブログの目的なわけだが、今回は、バーチャルボーイを語った回で語り切れなかった部分を補足しつつ、ポリゴンについて語ってみよう。


 ポリゴンという画像描画方法を得ることで、TVゲームは、広大な空間が「動ける」ようになり、同時に、滑らかな動きのキャラクターを「動かせる」ようにもなった。TVゲームが2Dから3Dになることによってもたらされた最大の変化はこの二点ではないかと僕は思っている。


 3D空間を「動ける」ゲームと言えば、リッジレーサーデイトナUSA(もっとさかのぼればバーチャレーシングとか)といったレースゲームであり、滑らかな動きのキャラクターを自在に動かせるゲームと言えば、なんと言ってもバーチャファイターに尽きる。 


 バーチャファイターリッジレーサーが登場した頃のゲームセンターは熱かった。当時は、まだまだ、ストリートファイター?が起こした対戦格闘ゲームムーブメントがまだまだ熱く、ゲームセンターに多くの人が集った時期だったが、バーチャファイターや、デイトナUSAといったセガのタイトル群は、当時のゲーセンの景色を完全に変えた。セガの筐体(アストロシティ)がビンビンに放っていたブランド感とか現在のユーザーに言ってもわかるかな?わっかんねえだろうなあ〜。バーチャファイターの動きについての衝撃は吉田戦車の「はまり道」というマンガのバーチャファイターの「動き見」する人たちのエピソードを読めば一割くらいは伝わるかもしれない。 


 そんな思い出話はさておき、今、バーチャルボーイを遊んでいて物足りないなと思うのは、キャラクターの動きの乏しさについてである。バーチャルボーイは、キャラクターの動きということに関して言えば、バーチャファイターの洗礼を浴びていない、オールドスタイルなゲーム揃いになってしまっているのだ。モーションデザイナーという職種を誕生させた、バーチャファイター以前の考え方で、ゲームを作っているのである。(この辺がまたバーチャルボーイと言うハードをさらに特異な存在にしてたりすんだけど)


 横井軍平氏は、バーチャファイターを2.5次元のゲームといい、本質的な意味での3次元のゲームではないと「横井軍平ゲーム館」で述べている。それはそれで正しい発言なのだが、バーチャファイターというゲームの魅力は3次元空間を自在に「動ける」ことにあるのではなく、ゲーム内容は2.5次元だとしても、ポリゴンのキャラクターを自在に「動かせる」ことにこそあったのではないか。バーチャファイターというゲームは、キャラクターを「動かせる」というTVゲームの原点ともいうべきプリミティブな喜びを当時のどんなゲームよりも味わうことができるゲームではなかったかと僕は思うのだ。


 横井氏は、プレイステーションや、ニンテンドウ64というハードを、より美麗な映像表現を可能にするハードへと進化しても、ゲームの本質的な変化はしていないハードなのではないかとして、懐疑的な見方をしていたようなのだが、僕は、90年代半ばというあの時代に生まれたハードやソフト群は、様々な意味で本質的な変化、進化を果たしていたのではないかと思っている。その中でも、ポリゴンというイノベーションは、単なる映像の変化/進化以上に、ゲームを操作する喜びという、原点回帰とも言える衝撃を当時のユーザーに与えていたのである。