ドラゴンクエスト9の序盤の巧みな構成について

 今回のドラクエの序盤の構成について書いておこう。ストーリー的なネタバレはほぼ無しの方向で。


 今回のドラクエ9では、最初にある程度自由にフィールドを動き回れるようになって、任意に戦闘がこなせるようになった状態の時、主人公キャラクターともう一人、レベルが向上しない、いわゆるNPCと冒険をスタートすることになる。


 このNPCの能力がちょっと変わっていて、攻撃能力は最初から主人公より若干劣っているのだが、素早さでは主人公よりも明らかに上回っているのである。ドラクエ5のパパスのような保護者的なキャラではないし、ちょっと足をひっぱるお邪魔キャラというほどでもない。最初は頼りになっても主人公はすぐに成長してしまうので、相棒的なキャラクターとしてもあまり適してるようには見えない。なぜこのようなキャラクターと最初に冒険するように作り手側は仕向けたのだろう?


 僕が考えるに、おそらくこのキャラクターは、主人公に乗り越えるべきものとして設定されていたのだと思う。特に素早さが明らかに主人公より上というのがキモなのだ。今回のドラクエ9では同じ敵キャラに、続けて通常攻撃をすると、二回目が1.2倍、三回目が1.5倍、四回目が2倍(4回目だけ未確認なんだけど多分2倍だよね?)と威力が増して行くシステムを採用しているのだが、主人公より素早いキャラクターが序盤に一緒に冒険してくれることで、この新しいシステムをなんの説明がなくとも学習できるようになっているのである。


 さらに、NPCはレベルが上がらない、成長しないキャラクターであるため、主人公はやがてレベルの向上とともに、、この最初の仲間よりも素早さが上回ることになる。だいたいレベル3くらいになると、主人公が先制攻撃したりするようになるのだが、この時に、NPCが主人公より、最初から攻撃力が低いという設定が活きてくることになる。最初から攻撃力が高い主人公は、NPCより後に攻撃することで、威力が1.2倍になるボーナスの恩恵を大きく受けることができるのだが、攻撃力が低目の相方NPCでは、主人公の後から攻撃してボーナスがついてもたいして威力が向上しないのである。つまり、今回のドラクエは、素早さが遅いことにメリットが存在するのだ。それだけだと、レベルが上がることで却ってデメリットが発生することを、プレイヤーに感じさせてしまうのだが、レベルが3くらいになると、スライム程度なら主人公の攻撃で一撃で倒せるようになっている。デメリットだけを知らせるのではなく、成長することによるメリットも確実にあることをプレイヤーに感じさせるという見事なチューニングだと思う。


 序盤で主人公とともに冒険する最初の仲間の性能が、素早さはあるけど、攻撃力が低いというちょっと変わったキャラになっている理由、それは、プレイヤーに今回の新システムと、その恩恵を受けるためには素早さの遅さが重要になる場合もあるということを、言葉で説明せずに、学習してもらうためだろうと僕は考える。


 このように久しぶりにやったドラクエはやはり、巧みな計算の下に作られているなあと思わせてくれるものだった。まだまだ序盤もいいとこだけど、ゆっくり楽しんで行こうと思う。

 
 しかし、アマゾンのレビューはえらいことになってんのね。よくわからんけど。