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美ら海水族館の面白さの秘訣は優れたレベルデザインにあり

 みんな大好き、美ら海水族館にこないだまた行ってきまして、これで2度目の訪問になるんですが、やっぱり面白いね。ジンベエザメ大きいね。一度目の時は夢中で楽しんでたけど、二回行く事で美ら海水族館の面白さを作る構造みたいなのが自分なりに見えてきたので、それを語っていこうと思う。よろしくね。

美ら海水族館の3つの素晴らしさ

 美ら海水族館には、大きく3つの素晴らしいポイントがあると自分は考える。まず一つ、世界最大級のアクリルパネルを使用した大水槽、もう一つが10mを超す大きさのジンベエザメやマンタが複数飼育することでそれらをまとめて同時に見れる事が挙げられる。まあこの二点に関しては、今更自分が指摘するまでもなくこの水族館を語る上では必ずと言って良いほどに挙げられるポイントだ。自分が今回主に語っていきたいのは、最後の一つ、レベルデザインが非常に秀逸ということなのである。

レベルデザインって何?

 このブログをそれなりに読んで来た人なんかには解説するまでもないのですが、美ら海水族館の話を読みに来た人からしたら耳慣れない言葉かも知れないので、一応レベルデザインって何なのかの解説もしておきましょう。ここだけチュートリアルモードなんでですます調です。

 
 主にTVゲームの分野で使われている言葉で、ゲーム中の「ステージ」や「マップ」のデザインのことを主に指す言葉だと思っておけば概ね間違いでは無いです。自分なんかは背景の機能面のデザインなんてこと言ったりもしますが、これだとゲーム知らない人にはわかり辛いですね。自分定義過ぎますね。水族館で言うところの見学する経路の設計であったり、水槽や魚の配置する順番の設計だと思ってもらえば良いのですが、一つ例を提示してみましょう。



 これはドラゴンクエスト一作目のスタート地点のマップなのですが、このスタート地点から既に最終目的地に竜王の城が見えてます。そして最初から見えているこの城にプレイヤーは最後まで辿りつけません。つまり視線は届いているのに、動線は届かないようにデザインされているのがこのマップなのです。このような視線と動線を巧みに誘導してくれるような構成がされているマップを自分は優れたレベルデザインがなされたマップと呼びます。


 美ら海水族館は、経路の設計や水槽の配置順番、そしてそこから何を見せるのかという視線の設計、要は自分が言うところのレベルデザインが非常に優れています。順を追って解説していきましょう。

高い位置にあるエントランス、いきなり「つかむ」最初の海



 美ら海水族館は元々海洋公園の一施設で海岸近くの小高い丘に立てられている建物の3階に入り口がある。1階から入るのではなくて、3階という高い位置から入場し、次第に下って行く構成になっている。この高い位置から下って行くという構成になっているのがポイントなのだが、これについては後ほど、黒潮の海あたりで解説しよう。
 
 入場してすぐ待っているのは「イノーの生き物達」というヒトデやナマコが展示してある浅めの水槽である。これが実際に手を突っ込んで直接触れることが出来るようになっている。ヒトデやナマコっていう見た目はともかく動きのあんまりないちょっと地味目の生き物が「体験」を通すことでグッと興味深い存在に変化する。そして最初から能動性を促す展示をすることで、見る側も単なる受け身の鑑賞態度なのではなく自分から能動的に鑑賞するようになる。そしてこの能動的な鑑賞態度こそが美ら海水族館全体を楽しむ上で非常に重要なことなのだが、そのスイッチを押してくれるのが「イノーの生き物達」なのだ。


 能動性的な「体験」を通して、水の中の生き物達の見方に変化が起きる。これが美ら海水族館が目指している目標でありテーマなのではないかと思うのだけれど、それが冒頭から提示される非常に上手い「つかみ」ではないかと思った。なまこは見た目以上に触り心地が気持ち悪いので是非触ってみて欲しい。手を洗う場所もすぐ近くに用意されてるからガンガン触って欲しい。水槽から持ち上げると怒られます。
 

序盤のハイライト「サンゴの海」と「熱帯魚の海」

 次に待っているのは、沖縄らしい色とりどりの珊瑚礁と熱帯魚が泳いでいる「サンゴの海」と序盤のハイライトと言える「熱帯魚の海」だ。


 ここに展示されているのは、いわゆる沖縄らしさを感じさせる色とりどりの珊瑚礁や熱帯魚なのだけど、「サンゴの海」には小さめの熱帯魚が、「熱帯魚の海」には主に20cmから30cm程度の大きさの魚が泳いでいるのだが、数匹1mから2mクラスの大きめの魚が展示されており、この水族館で最初の「大きさ」に関するインパクトを与えてくるエリアになっている。自分がここを序盤のハイライトとしたのは、そういう理由からだ。


 大きな魚の名前はタカマイとかメガネモチウオというそうです。どっちも良い面構えしてます。

 

一旦スケール感を忘れさせる中盤

 序盤の山場を過ぎると次は個別に水槽が並ぶエリアに移っていく。ここでは水槽全体のスケール感や、その中の大きな魚のインパクトというよりは、一つ一つ個別の生き物にスポットを当てて鑑賞することになる。


 前のエリアではトータルの海の環境を見せつつ、このエリアでは個別の生き物にスポットを当てることで、全体の状況を見るという楽しみ方と、個別の生き物を観察するという楽しみ方という二種類の楽しみ方を客は自然に学びとることが出来る。次に待っている「黒潮の海」への布石は万全と言っていいだろう。

圧巻のクライマックス「黒潮の海」

 というわけで「黒潮の海」なのだが、ここの何がすばらしいかと言えば、「黒潮の海」に到達して直ぐ、自分の真正面にこの水族館で一番大きいジンベエザメを一番大きく見える場所で見れるってことに尽きると自分が考える。この文章の冒頭で触れた高い位置から下って行くという経路の構成がここで活きてくる。「黒潮の海」は圧倒的な大きさの水槽なのだが、その水槽を高い位置から見始めるように設計することで、基本的に水槽の上部を回遊しているジンベエザメを客は真正面から見据えることが出来るのである。最大の目玉、ジンベエザメをかぶりつきの位置で鑑賞することからこの海は始まる。


 更に、ジンベエザメを一番大きく見えるようにはしつつ、最初の位置からではジンベエザメの全体像が見えないように水槽を分割しているのがまた重要なポイントだ。冒頭から最大のスケール感と同時に水槽の全体像を見せてしまったのでは、ここで客がずっと水槽を見続けてしまい、渋滞が発生しかねないことになる。だが、全体像の分割をすることで、我々はより下の階へと下って行かずにはおれなくなる。非常に巧みな経路と視線の設計がなされているのだ。



 そうして下るところまで下ったらそこで始めて水槽全体が見渡せるようになる。見渡すというよりは、見上げると言った方が良いような圧巻の大きさなのだが、この水槽や、中で泳いでいる生き物を写真で撮っても驚くほどに自分が感じているスケール感が感じられない画像になってしまう。写真の無力さというものをここまで感じれることはなかなか無い。なぜそうなるのかと言えば、写真はなんだかんだで被写体を一つのフレームに収めてしまうが、「黒潮の海」を目の当たりにした時に自分が受けているスケール感が一つのフレームに収まりきれないからなのでは無いかと思う。身体全体を駆使する体験的な視覚装置、それが「黒潮の海」なのである。


 ちなみに「黒潮の海」は真上から見る事も出来る。でも真上から見るとなんていうか楽屋裏っぽいっていうか下で見るよりも不思議とスケール感を感じない。真上から見ると水面が波打っていて透明度が下がるからスケール感を感じないとか色々理由があるのだろうけど、その辺を考えるためにも真上からの鑑賞を是非。FPSの舞台っぽくて格好いいです。

最後はしっとり「深海の海」

 ジンベエザメやマンタやらを堪能しきったら最後はしっとり「深海の海」に進もう。部屋も暗くて雰囲気があるぞ。ダイオウイカもいるよ。黒潮の海で感動し過ぎてこの辺適当です。

美ら海水族館の面白さの秘訣は優れたレベルデザインにあり

 というわけで最後のまとめだ。ここまで振り返って改めて思うのだが、美ら海水族館は本当に経路の設計が優れている。そして、単に我々を歩かせる道筋の設計が優れているという事以上に、我々がどこをどのような位置から見ることでどのような印象を受けるのかという視線誘導の設計が非常に優れているのだ。


 ドラゴンクエスト1竜王の城の配置位置のような動線と視線の見事な制御、それに勝るとも劣らないほどに、美ら海水族館、特に「黒潮の海」の動線と視線の制御は見事だ。だから自分は美ら海水族館をあえてレベルデザインが優れていると述べたのである。世界最高峰の大水槽に、世界初のジンベエザメ複数飼育をそのまま展示するというそれだけでも充分売りになる要素があるのにそれだけでは満足せずにレベルデザインにまで磨きがかけられていることは本当に素晴らしい。美ら海水族館以上に大きな水槽を持った水族館が既に現れているが、美ら海水族館の魅力はそう簡単には無くならないだろう。それはレベルデザインという確かな骨格を持っている水族館だからである。足を運ぶ価値のあるレジャー施設っていうのはこういう施設のことを言うのだと思う。沖縄に旅行の際は是非に。


すいません見忘れましたサメの海

 すっかり堪能した気になってたんですが、「サメ博士の部屋」だけ完全に見忘れてました。ごめん…。不完全ガイドです…。