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宮本茂はパックランドをどう思っていたのか

横スクロールのアクションゲームの代名詞と言えば『スーパーマリオブラザーズ』だが、横スクロールのアクションゲームは『スーパーマリオブラザーズ』から始まったみたいな迂闊なことをネットで発言したりすると、ほぼ間違いなく容赦の無いツッコミを浴びることになる。それ以前に『パックランド』があるからだ。



パックランド - YouTube


僕もちょいちょい『スーパーマリオブラザーズ』についての文章を書くのだけど、少なくない頻度で、「マリオってパックランドのパクリでしょ」みたいな心無いコメントが寄せられる。横スクロールの原点はマリオなり!みたいな迂闊な発言はしていないにも関わらずである。実際それなりに発言力ある人がマリオこそ横スクロールの原点みたいな発言を公の場でしてたりするからまた問題はややこしい。


guutex.com


ネット上でマリオを褒める→元は『パックランド』でしょみたいな突っ込みが入る、っていうほとんど様式化されたこの流れは、今年、自分のブログ上でもきっちりかまされたので、かれこれ30年以上続いていることになる(マリオ30周年だからね)。この流れは、『スプラトゥーン』に対して発売すらされてないcolor warsの動画を貼ってドヤる人達にきっちり継承されているとみて良いだろう。人間は進歩をしない。



color_wars.avi - YouTube


では、マリオの生みの親である宮本茂は『パックランド』をどう思っているのだろうか。実はガッツリとパクってたりするんだろうか。宮本茂は『パックマン』についての発言は色んな場所でしているのだけど、『パックランド』についての発言はかなり少ない。しかし、宮本茂が『パックランド』にかなり直接的な言及をしている貴重な書籍があったので、宮本茂自身が『パックランド』について発言している部分を引用する形で紹介したい。


以下引用

飯野 なるほどね。でも、『スーパーマリオ』の登場は、すごく突然な感じがしたんだけど。ゲームの進化の中で突然あの世界は(笑)。


宮本 『パックランド』がありました。それまでにジャンプゲームというのをつくってましたでしょ。僕はナムコシンパで、ジャンプゲームをやってこないナムコにすごい敬意を払っていたんです。僕らがつくっているジャンプゲームをいじってこない。ところが、『サーカスチャーリー』とか、よその会社からその手のゲームがどんどん出てきて、我が社も当然、一番最初の『ドンキーコング』のときにスクロール的なものを始めている。あの頃すでに、『スクランブル』とかはあったから、スクロール基板が欲しかった。それが、『マリオブラザーズ』で一応完結しましたね。しかし、でかいキャラクターのスクロールジャンプゲームとなると、うまくいかない。唯一あったのはカメを上から踏むっていうアイデアだけ。


飯野 何で突然、カメを踏もうと思うんですか(笑)。そこが変ですよ。


宮本 キャラクターが小さいと分かりにくいから、大きくなった時に踏むというジャンプゲームの実験はしてたんです。そんな時にナムコから『パックランド』が出てきた。ゲームセンターで、僕、東京に行ったときに『パックランド』が置いてあって、ナムコがジャンプゲームに手を出してくるのかと、それなら俺がやってやろうじゃないかと。それがきっかけ。


飯野 そういえば、僕もナムコが好きでしたね。


宮本 まあ、尊敬するゲームというとナムコの『パックマン』やからね。僕は、目に刺激が少ないし、シンプルでゲームの原理が見えやすいので黒バックをずっと守ってきたんだけど、もうそろそろ潮時かなとも思ってたしね。ハードで刺激的なものをつくろうと思ったら、そろそろ青空バックでとも思っていたし。最終的に制作に入っていったとき『パックランド』が影響してますね。だから、詳しい人は『パックランド』の真似をしましたみたいに言う人もいるけれども、『パックランド』とは全然違うゲームなんですよ。でも、ナムコがあれをやってきたから、僕のマリオは動き出したというのはありますね。

スーパーヒットゲーム学

スーパーヒットゲーム学



飯野賢治による複数ゲームクリエイターへのインタビューをまとめた書籍、『スーパーヒットゲーム学』からの引用だが、如何だろうか。


なんていうか相変わらず、『パックマン』はリスペクトしてるし、ナムコって会社のファンであると自ら公言しているのだけど、『パックランド』に対してはあんまりリスペクトしてないっていうか、ちょっと言葉悪いけど、なんか上からな目線すら感じる発言をしているのである。


正直自分にとってはこれらの発言はかなり意外だった。『パックマン』を尊敬するのと同じように『パックランド』もリスペクトし、そこから受けた影響を自分なりに昇華しやがて『スーパーマリオブラザーズ』に繋がるもんだと思っていた。


宮本茂は、横スクロールという一般的に目の引きやすい要素以上に、ジャンプというアクションこそ、自分が切り拓いた領域であるという強い自負を抱いていた。だからこそ、そこに後から乗り込んできた『パックランド』にはアタック感強めのライバル心を持つにいたったのではないだろうか。この事実は非常に興味深い。


ドンキーコング』でゲームデザイナーとしてデビューし、そこから『マリオブラザーズ』、『スーパーマリオブラザーズ』という一連のジャンプアクション系タイトルを作成する中で、宮本茂はジャンプアクションをひたすら磨き続けた。ジャンプこそが自分の作るゲームの本質であるということにかなり早い段階で自覚的だったし、それをバージョンアップし続けることにとにかく余念がなかった。


この辺のマリオのジャンプがバージョンアップし、多機能化していく流れはやまなしレイさんのブログで詳細に解説されてるんで、そちらを読んでもらうのが一番だろう。正直、この記事は俺が書きたかった…。でもすっごく面白い記事。


マリオのジャンプは如何にして「多機能」になっていったのか やまなしなひび-Diary SIDE-


この記事の目的は『パックランド』をこき下ろすことではない。横スクロールの系譜として『パックランド』から『スーパーマリオブラザーズ』という線が見えてくるように、ジャンプアクションという観点からはまた違った線が浮かび上がってくるという、また違ったモノの見方の提供こそが目的である。なんだかんだで『パックランド』を宮本茂が相当意識してて、少なからず影響も受けてるのは発言からも明らかだしね。


宮本茂がマリオのジャンプを「磨き続けた」という事実は非常に重要だし、執念深いブラッシュアップの果てに『スーパーマリオブラザーズ』というブレイクスルーに至ったという事実は広く認識されるべきことだろう。だからこそ、1998年に出版された『スーパーヒットゲーム学』の発言を今引用し、記事を書いたのである。そして、15年以上も前にこんな貴重なインタビューをして本にまとめた飯野賢治は偉い。惜しい人を無くしたものだと思う。


僕は上記のやまなしさんの記事でされてるような、マリオの身体機能、身体設計からゲームを分析していくアプローチは非常に重要になってくると考えている。そして、現在のゲームシーンにおいてキャラクターのフィジカル(身体)からの分析が最も必要とされているタイトルは間違いなくスプラトゥーンだろうね。というわけで、これからしばらくは、スプラトゥーン批評の為の布石のような記事が続く。


やたら長いし、色々話飛びまくりだし、そのくせいろいろ欠けた部分の多い前の記事より先に書けよって話ですよね。本当に。


hamatsu.hatenablog.com


というわけで、しばらく続きます。