マーベル映画以降の時代に対応し始めた少年ジャンプ
マーベル映画以降なんて言い方してしまうと、DCコミック側から怒られそうだが、昨今の日本におけるアメコミ映画の受容の最大の要因はやはりマーベル映画の躍進だろう。そしてそんなマーベル以降の時代に現れるべくして現れた漫画、それが「僕のヒーローアカデミア」である。
マーベル映画の何が素晴らしいかって言えば、特にアイアンマンに言えることなんだけど、ジャンプ黄金期にどっぷりジャンプに浸かってた自分が見ても、すんなり入れる水準の「戦闘力」を備えてたからなんじゃないかと思ってたりする。悟空とアイアンマン戦ったらどうなるんだろ?ってすんなり思えちゃう感じっていうか。
よくよく考えてみるとドラゴンボールって漫画には映画からの影響がモロに入っていたなと思う。80年代に流行していたジャッキー・チェン主演の一連のカンフー映画から思いっきり影響受ける形でスタートし、そのまんまターミネーターみたいな敵キャラクターが登場するし、ピッコロ大魔王のデザインのルーツはだれがどう見てもエイリアンだろう。思えば牧歌的な時代でもあった。
ドラゴンボールにそういった外部メディア、特に映画からの影響が見えにくくなるのは何時ぐらいからだろう?やっぱり悟空が成人してからだろうか。最初は次第にエイリアン的なデザインになっていくフリーザが最終的になんの装飾もなくした素の状態を見せた時は正直ゾクッとしたし、あれが鳥山明が様々な影響を受け入れ解釈した上で辿り着いた1つの到達点なのは間違いないだろう。個人的には最後に登場する魔人ブウのデザインにそのさらに先を感じたりもするけれど。
漫画というメディアは日本で独自に発展したメディアなのは間違いないが、その発展は外部のメディアから貪欲に刺激的な要素を咀嚼、吸収した上で築かれた発展なのだと思う。
「僕のヒーローアカデミア」を読んでいると、当たり前のことなんだけど、久しく忘れていたそんなことを思い出す。なにより作者が楽しんで描いていることがこっちにまで伝わってくる生き生きとした描写が素晴らしい。メイドや民族衣装を描いているときの森薫漫画のヒーロー版と言えば読んでない人にも伝わるだろうか?
マーベル映画に限らず、昨今のアメリカ映画の進化によって日本のお家芸的な表現の危機を訴える人は多いが、自分は危機よりも、日本の漫画や映画に素直に影響を与えていた80年代以前のアメリカ映画が帰って来てくれたことのほうが喜ばしいのではないかと思っているし。受けた影響を今の所最良の形で少年漫画という日本独特のフォーマットに落とし込む才能と作品が現れた事を喜びたい。今思うと90年代から2000年代半ばあたりのアメリカ映画ってそういう部分では大分不発だったと思うし。結構いいとこいってたのってマトリックスくらいじゃない?