1998年の邦楽シーンを振り返る

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

発売後即買いして、即読了してしまった『1998年の宇多田ヒカル』。この本読んで改めて1998年って俺もCD買いまくってたなー音楽雑誌読みふけってたななーと色々思い出したので、自分なりに1998年にどんなCDが発売されてそれをどう聞いてたのかを振り返ってみたい。


スリーアウトチェンジ

スリーアウトチェンジ

個人的に1998年最も聴いたアルバムであり、1998年のマイベストアルバム。「音」の鳴り方、「音」の響き方、それだけでももう完全にやられた。当時のレビューではその「音」についてフレッシュであるとかマジックみたいな形容のされ方をしていたのだけど、その辺の表現の曖昧さがファンとそうでない層の間に溝を生じさせていたりもしたのを思い出す。


ギヤ・ブルーズ

ギヤ・ブルーズ

前作の『Chiken Zombies』からアルバムの先行シングル、『 G.W.D』、『アウト・ブルーズ』、『スモーキン・ビリー』が畳み掛けるように発売され、満を持して登場した大傑作。自分にとって登場の音楽シーンは、次から次へと圧倒的な「音」を聴かせてくれる時代だった。おそらくそこには録音機材の発達などの技術的な側面もあったのだろうが、その進化に呼応するようにどんどん「音」が更新されていく様はスポーツ的ですらあったし、パワーインフレをし続けるジャンプのバトル漫画を読んでいるようでもあった。


そんな中で作品をリリースするごとに「音」のテンションが上がり続けた98年のミッシェル・ガン・エレファントを自分は変身を続けるフリーザのような存在として見ていたように思う。1998年は『1998年の宇多田ヒカル』でも指摘されているように、フレッシュな新人達が続々と登場した年だったが、それら新人達を「音」一発で圧倒したのが彼らだった。


東京

東京

1stアルバム『さよならストレンジャー』がリリースされるのは1999年だが、1998年に発売されたシングル、『東京』の時点で既にシーンにはかなりの存在感を放っていた。個人的にはインディーで発売された『ファンデリア』を愛聴していた。

今ではすっかり普通というか特に珍しくもなくなった。メガネをかけたミュージシャン、メガネをかけたボーカリストの先駆けになったのは間違いないだろう。当時の音楽雑誌でも仕切りにメガネいじりされてたのを思い出す。ロックが既にカッコつけてやるものではなく、等身大の自分をそのまま表現するものにシフトしていたことを象徴してたのかなーとか思う。


陽はまたのぼりくりかえす

陽はまたのぼりくりかえす

1998年にはアルバム『Buzz Songs』も発売されていたが、ドラゴンアッシュの98年と言ったらやはりこれではないだろうか。この作品以降、雑誌での発言が急激に前向きなものになったりしたのが印象的だった。ここから翌年の大ブレイクへ繋がっていくのは間違いないだろう。大ブレイクの結果おそらく90年代で最もバッシングされたバンドになったんだけど、当時はそんな存在になろうとは全く思わなかった。


90年代後半っていう「音」の時代に男性アーティストでは最も「言葉」を打ち出したのが彼らだったと思うのだけど、その強かさであるとか、クレバーさ、そしてそれらと表裏一体の不器用さが好きだったんだけど、こんな聴き方してるリスナーは多分あんまり居ないだろう。でも、ドラゴンアッシュ周辺に吹き荒れてたバッシングの嵐はいまでも苦々しく思い出すのは確かだ。


24時

24時

前作『サニーデイサービス』のあまりに高い完成度から、次はどうすんだろうと思ってたところにリリースされたのがこの『24時』。


そりゃ『サニーデイサービス』とか『東京』は俺も好きですよ?ええ大好きですよ。でもあれほど完成度の高い隙の無いアルバムの次にこの混沌としたアルバムを出してしまうサニーデイサービスの正直さ、誠実さには当時やられましたよ。前作に続いてアルバムを最初から最後まで聴かないと聴いた気がしないっていうカロリー消費の高いアルバムなんだけど、そんなところがまたいい。


TRICERATOPS

TRICERATOPS

THE GREAT SKELETON’S MUSIC GUIDE BOOK

THE GREAT SKELETON’S MUSIC GUIDE BOOK

どっちか片方だけ98年発売かと思ったら、どっちも98年でやんの。すごいなトライセラトップス。どっちも音が気持ち良くてどっからでもどの曲でも気持ち良く聞ける名盤だと思うのだけど、なんか当時ってトライセラの良い意味での軽薄さ低く見られる風潮みたいなのがあって、その辺の逆風を受けてのリアクションが次作、『A FILM ABOUT THE BLUES』で思いっきり乗っかってて、1stと2ndが好きだった自分はえらい戸惑った覚えがある。


ロメオの心臓

ロメオの心臓

恥ずかしながら初めて本格的にブランキージェットシティを聴いたのがこのアルバム。『赤いタンバリン』、『ロメオ』、『ちいさな恋のメロディ』とかいい曲多いけど、個人的に好きなのは『彼女は死んだ』。


かなり好きなアルバムなんだけど、ブランキージェットシティを語る言葉をあまり持って無いので、この辺で、すいません。


股旅

股旅

一連の並びからだと異質な感じもするけど、この作品も98年である。やっぱすごいな98年。個人的にもよく聴いてたし、傑作だと思うんだけど、なんか98年っぽい感じがあんまりしないのは、98年って年が転換の年だったからなんだろうなと思う。この辺はかなり独断も入っているとは思うんで、別な人の意見も聞いてみたい。


CM

CM

ファンタズマ』が世界中で発売されたことで、国内外のミュージシャンからリミックス依頼を受けるようになったコーネリアスによるリミックスアルバム。これ以降オリジナルアルバムを2枚しか発売していないのに、リミックスアルバムは4枚もリリースするようになるとは本人も思っていなかったんじゃないかと思う。でもコーネリアスによるリミックスアルバムはどれもハイクオリティで外しがない。彼の資質にリミックスっていう作業があってたってことなんだろう。作詞、作曲でもなくリミックスという行為で職人的な資質を開花した例として興味深い。



はい、こんな感じで振り返ってみたが、アレがないとかコレがないとか当然あるでしょう。あくまでも自分の思い入れの範囲でのピックアップなのでまあしょうがない。改めて1998年はすごい年だった。その前後の97年、99年あたりもすごい年だったので、また振り返ってみようかな。


それと、90年代後半は「音」の時代だと自分は書いたが、個人的にアルバムの冒頭から吹っ飛ばされたアルバムもまとめてみようかなとか思う。他の人の1998年に聴いた音楽まとめ記事なんかも読んでみたいな。それではまた、みんな『1998年の宇多田ヒカル』読もう。とくに当時buzz読者は必読な。

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)

1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)