グッド・フェローズ−ア(↑)コガレ=ウルフ・オブ・ウォールストリート

 ウルフ・オブ・ウォールストリートを観て来た。マーティン・スコセッシの映画ってタクシードライバーくらいしか見た事なかったんで、グッド・フェローズとカジノと救命士を観ておいてから観に行くことにした。


 んで、まあ評判通り、グッド・フェローズと同形式の作品だった。つっても自分はカジノ→グッド・フェローズ→救命士の順番に観たんで、グッド・フェローズってカジノに似てるなあとか、時系列がぐちゃぐちゃの状態だったんだけど、一昨日くらいまで。


 じゃあウルフ・オブ・ウォールストリートがそれらの作品とどこが違うのかって言われれば、一番違うのは演じてる俳優が違うのである。


 ゴッドファーザーと違いグッドフェローズはギャングの内情をあまり美化せずに描いたと言われていても、演じてるのがロバート・デニーロだったりジョー・ペシだったりして、やっぱ格好いいし、すごい怖いところは怖いんだけど、ウルフ・オブ・ウォールストリートの主役はレオナルド・ディカプリオで相棒はマネーボールでブラット・ピットの相棒もしていた太っちょのジョナ・ヒルなんである。こっちはあんまり格好よくは無いし、怖くも無いのだ。


 要するにグッド・フェローズにあったギャング達の格好良さとか力強さからくる怖さみたいな、ギャング映画、ヤクザ映画にありがちなア(↑)コガレ(©タマフル)成分を引いた映画がウルフ・オブ・ウォールストリートなのである。

 主人公達は劇中でバンバンお金を稼いで、いい家、いい車、いい女と人間の欲を次々満たしていくんだけど、観ているこっちはあんまり羨ましくはならない(いい女だけは正直ちょっといいなと思ったけど)。日本人だとホリエモンとか与沢翼みたいな類似例がサクッ浮かんでしまうからなおさらだ。


 そんな一番グッド・フェローズやカジノの大きな魅力を無くしているこの映画がじゃあ詰まらない映画なのかと言えばそんなことは無い。


 むしろこの映画が面白いのは、人間的魅力みたいな余計なものを排除することで、無駄が削ぎ落とされたシャープなスポーツカーのように栄光と転落の物語を疾走し続けるところだと自分は思う。


 そう、この映画は色気とか怖さとか最後の破滅とともに訪れる哀愁みたいなものが無い分、全編カラッと笑えるコメディになっているのである。


 序クライマックスの遅れてヤクが決まっちゃってカウンタックにどうにかのろうとするシーンはゲラゲラ笑ってしまった。乗った後にジョナ・ヒルと電話線からまってくんずほぐれつのシーンも面白いんだけど、カウンタックにのるまでの階段でのくだりとかカウンタックガルウィングをあんなに格好悪く撮ってしまったのは画期的過ぎるし、最高だ。


 んで、この映画の最後の最後で、ディカプリオが辿りつく境地というか地平みたいなものがあるんだけど、これはもう笑えるをとおりこしてちょっと呆れるとともに感動してしまった。


 なんていうか今のホリエモンの姿ともちょっと被るというか、懲りねーなコイツというかね。


 しかし、主役を演じているディカプリオは、今作に限らず、「レボリューショナリー・ロード」とか「J・エドガー」とか魅力のない登場人物を魅力的に演じることにかけては希有な能力を発揮する俳優になっており、目が離せない。アカデミー賞とれると良いですね。

 
 でも、グッド・フェローズでデニーロ強奪した額(5億円くらい)より遥か上の金額、何億とか何十億ってお金をデニーロ達より明らかにバカそうな面々がバンバンやりとりしててしかもどっちも実話ベースって考えるとあんまり笑えない話のような気もしてきた。デニーロなんかは5億円のために何人もの人を始末してたのにね。