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『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』には「壁」が存在しない

ゲーム空間は大きく3種類に区分けすることが出来る。


「地面」「壁」「天井」だ。


「地面」とはプレイヤーが移動可能な地形。


「壁」とはプレイヤーの水平方向の移動を塞ぐ地形。


「天井」とはプレイヤーの垂直方向の移動を塞ぐ地形である。


ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド』は恐ろしいことに「壁」が存在しない。


いや、正確には従来のシリーズにおけるダンジョンに該当するであろう「祠」には明確に「壁」が存在する。


そしてそのあまりに明確な「壁」の存在と対比するかのように、メインフィールドには移動を塞ぐ「壁」がほぼ存在しない。


今作に登場するのは制限なしに移動可能な「地面」と制限付きで移動可能な「地面」の2種類とあとは幾つかの「天井」と広大な「空」だけだ。


まだプレイしたばかりで到達出来ていないが世界の果てがある以上、そこには一応「壁」が存在するのだろう。しかし、その存在はまだ僕の目の前には現れていない。


「壁」の存在しないフィールドデザイン。ゲームの地形をデザインしたことがある人間ならそれが、なんと恐ろしい響きかすぐ分かる。そして新しい『ゼルダの伝説』今ならそれがなんと魅力的な響きか悔しいほどに良くわかる。


画期的なゲームとは世界とプレイヤーとを新しい関係性で繋ぐ。『メタルギアソリッド』によって、なんてことはない「物陰」が「隠れる場所」に変わり、『GTA』によって他者の車が「奪うもの」に変わり、『アサシンクリード』によってほとんどの建物が「昇り降りするもの」に変わり、『スプラトゥーン』によって世界は「塗り替える」ものになったように。


ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』において、山という山、崖という崖は「アタックするもの」である。グランドキャニオンの写真を見て思わず「どっから登ろうか?」と考えてしまったのなら貴方は立派なブレスオブザワイルド脳だ。


まだプレイは始まったばかりだが、いやはやとんでもないゲームである。決して解像度が高いとは言えない岩肌と向き合って、既存の「壁」を無くしたゲームに比べてあまりに鈍重な挙動でひたすらに崖登りをしているとこれが2017年のゲームかと一瞬不安になったりもするが、登った後に確実にご褒美を用意する丁寧なデザインは流石任天堂と言ったところ。だが、それ以上に圧倒的なフィールドの広さと物量によって目の前に開ける世界の広がり、「視界のご褒美」が尋常じゃない。物語の「起伏」なんて言い回しがあるが、単なる移動に豊かな「起伏」が存在するだけでここまで物語性を孕むものかと感動すらしてしまう。


急に話が飛ぶけど、『ゲームオブスローンズ』でジョン・スノウが「壁」の上で見た景色ってこんな感じ?みたいな。


あらゆる山、あらゆる崖に「アタック」出来るというだけで、地図を見る目がルートを模索する目に一変する。このゲームを遊んだ後だとおそらく等高線のある実在の地図を見る目も変わっているだろう。そんな自分自身に変化を起こすゲームなどそうそうあるものではない。

大傑作である。