『ワールドトリガー』について語る前に、少年漫画における主人公類型と漫画が持つドキュメンタリー性について語る
最近、週刊少年ジャンプが面白い。すでに次世代ジャンプの看板の一角になりつつある『僕のヒーローアカデミア』、料理とエロの融合を目指す異色の料理漫画と思ったら、どんどん少年漫画の王道を歩み始めた『食戟のソーマ』、正直打ち切りコースかなーと思ってた『左門くんはサモナー』ですら脇役にスポット当て始めたあたりからメキメキ面白くなっていったり、現在(2016年2月8日号時点)打ち切りコース入ってるかなーって漫画は前作『クロスマネジ』が惜しくも打ち切られたKAITOの『バディストライク』くらいしか無い(俺の独断と偏見に基づく判断です)。
左門くんはサモナー 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 沼駿
- 出版社/メーカー: 集英社
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そんな状況なものだから俺が今最も楽しみにしている漫画『ワールドトリガー』が打ち切られやしないかと毎週毎週気が気でない。とうとうジャンプ読み始めて30年くらい経っているが初めてアンケートまで送っている始末だ。もし懸賞が当たったらこのブログで報告します。まあTVアニメやってるし、単行本売れてるみたいだし大丈夫だとは思うのだけど…。でも作者の体調面の問題からちょいちょい休載してるし二重三重に心配だよ本当に。
前にもこのブログで『ワールドトリガー』を語って、その時も結構な反響があったし、最近別のブログでもかなりの分量&熱量で『ワールドトリガー』を語って反響も中々大きかったのを見るに、とうとう時代が来るのか?ついに来ちゃうのか?っていうわけで、前に書いた分でも全然足りないと思っていたので、また語ろうと思う。だが、その前にまずは、ジャンプのバトル漫画の主人公をザックリをタイプ分けすることから始めよう。『ワールドトリガー』について語るのは、その後だ。
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ジャンプにおける2タイプの主人公
ジャンプの、というか少年漫画の主人公、特にバトル/スポーツ漫画の主人公は大きく2タイプに分けられる。
主人公が劇中でほぼ最強状態から始まる「無双型」と、物語が始まった当初は素人以下の腕前しかないが、秘められた潜在能力を持ち、その片鱗を見せながら次第に成長していく「潜在能力型」の2タイプである。
「無双型」の主人公の作品と言えば『北斗の拳』、『るろうに剣心』なんかが挙げられるだろう。『ジョジョの奇妙な冒険』の第三部の主人公、承太郎も「無双型」の主人公に分けられる。
- 作者: 原哲夫,武論尊
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るろうに剣心―明治剣客浪漫譚 完全版 (01) (ジャンプ・コミックス)
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このタイプの特徴はいきなり最強状態から始まるので、よほどのことでも起きない限り努力が不要で、自分の正体を隠して物語に登場していれば事態の収束に長けた存在になるし、自分の正体が明かされていれば、主人公を狙う敵が現れたりと、事態を展開することにも長けた存在である。良くも悪くも台風の目のような存在になりがちなのがこのタイプである。
「無双型」主人公の物語は劇中最強の筈の主人公ですら勝てないライバルが登場することで最高潮に達する。『北斗の拳』で言えばラオウとの邂逅の時がそうだし、『るろうに剣心』で言えば志々雄真実と激突した時がそうだろう(その次の復讐編も薫殿の件で盛り上がったけど)。『ジョジョの奇妙な冒険』の第三部はかなり早い段階で承太郎を始めとする主人公グループが正面戦闘するには強すぎて如何に搦め手で崩すか敵側があの手この手を凝らす様が面白かったけど、やはり一番盛り上がったのは最後の承太郎対DIO戦ではなかっただろうか。
もう一つのタイプ、「潜在能力型」を主人公に据えた作品と言えば『SLAM DUNK』、『NARUTO』なんかが挙げられるだろう。
- 作者: 岸本斉史
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「潜在能力型」の特徴は、ど素人にも関わらず、その才能の片鱗を見せることで圧倒的な力量差があると思われていた相手にもその都度その都度一泡吹かせる下克上の瞬間が描けたり、着実な努力でもって才能が大きく開花していく過程を描けることにある。
僕個人の好みの話になるが、少年漫画がもっとも輝く時は、まだまだ漫画家として未熟な作者の成長と劇中の登場人物の成長の軌道がシンクロした時ではないかと思っている。その時、フィクションであった筈の漫画が生々しいドキュメンタリーにその姿を変える。
『SLAM DUNK』のクライマックス、山王戦での主人公達の成長、増していく試合の緊迫感にシンクロする形でぐんぐん変質していった絵柄は、漫画、特に週刊という短いスパンで連載される漫画の持つドキュメンタリー性をこれ以上なく表現してはいなかっただろうか。
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この辺の漫画にちょくちょく現れる作者と劇中の主人公との成長軌道のシンクロによって発揮される絵柄の変質というテーマは語りだすと長くなるので、また別の機会にまわそう(そんなんばっか)。
ちょっとだけ語っておくと、ある時期に唐突に荒れた『幽遊白書』の絵柄、どんどん硬質になり殺伐としてくる後期『ドラゴンボール』の絵柄、そして先程解説した『SLAM DUNK』の絵柄と90年代半ば、ジャンプ黄金期という場の放つドキュメンタリー性は凄いね。
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というわけで以上2タイプが少年漫画における主人公の2大類型である。あの漫画はどうだろうとか、あの漫画はあてはまらないのではないかとか色々思うところはそれぞれあると思う。まあこんだけザックリと分けてるんだから、そりゃそうだ。自分もこのテーマについて語りたいことはまだまだ膨大にある。
例えば言わずと知れた大ヒット作、『ONE PIECE』は「無双型」主人公として物語を開始し、アラバスタ編で真っ向勝負で負ける相手、クロコダイルの登場によって一つのピークを迎えたが、その後、「無双型」だった筈の主人公がボロボロに負け始めるようになりそれでも物語を転がし続けた結果が白ひげ海賊団VS海軍の全面戦争編でもう一つのピークを迎えるという、かなり特異なストーリー展開をしていたのではないかということを考えてたりする。
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あと『ジョジョの奇妙な冒険』の第二部は敵キャラ、特に最後に究極生物となったカーズと主人公の基本的な戦闘能力の差があまりにもあり過ぎたことで有名だけど、「騙し合い」という能力に関しては主人公のジョセフ・ジョースターに適う相手は1人としていなかったという点で、変化形の「無双型」だったのではないかとか、言いたいことはまだまだ山ほどある。
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ジャンプ漫画じゃないけど、「はじめの一歩」は「潜在能力型」の一歩と「無双型」の鷹村の2大主人公漫画なんじゃないかとかね。あと千堂という本来であれば「潜在能力型」の『SLAM DUNK』でいう桜木花道のような主人公にだってなれたんじゃないかという、主人公の資質を備えすぎた特異なライバルと一歩が2度目の激突をするララパルーザがどれだけ素晴らしいか、ボクシング漫画の一戦としてどれだけの金字塔なのかとか語りたい、語りまくりたい。
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だが、本当に語りたいのは、「無双型」、「潜在能力型」という2大類型に当てはまらない主人公を描き、大袈裟に言えば少年漫画の新しいモードを築いている漫画なのではないかと日々感じている漫画『ワールドトリガー』についてなのだ。
この漫画の主人公の一人、三雲修は、始めから完成された強さを持ったキャラでもなければ、眠れる力もない、徹底して少年漫画の主人公としては不適格なキャラクターなのだが、そんなキャラクターを主人公に据えることで『ワールドトリガー』はどのような物語を、週刊少年ジャンプというアンケート至上主義の非常に厳しい環境の中で展開してようとしているのか、このブログで語っていきたいと思う。
- 作者: 葦原大介
- 出版社/メーカー: 集英社
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