前にこの記事でも触れたが、この記事の内容が散らかり過ぎていて印象に残ってる人もあんまりいないと思うので、ビハインドビューについて再度書くことにする。
ビハインドビューって?
ビハインドビューとは三人称視点で行うシューティング形式のゲーム、いわゆるTPSに大きなターニングポイントをもたらしたシステムである。射撃の際に画面の左側にキャラクターを寄せて、カメラの位置を右肩付近まで接近させることで、主観視点で射撃を行う形式のゲーム、FPSに近い視点での射撃を行えるようにしたことで、両方の良いとこ取りに成功したゲームシステムのことである。欠点としては移動と射撃の両立が難しい、FPSに近いとは言え完全にカメラと射線の齟齬が生じないわけではないなどが挙げられる。
代表作として挙げられるタイトルはまあ自分のブログでも何回触れたかわからないくらい触れてるタイトル、『バイオハザード4』である。発売日は2005年1月11日。
次にビハインドビューにカバーアクションという防御と移動の制限を、無理のない形でプレイヤーに強いるシステムを洗練された形で搭載することによって、よりTPSをポピュラーな存在に引き上げた『ギアーズ・オブ・ウォー』も非常に重要なタイトルだろう。このタイトルの発売は2006年11月8日(日本国内の発売は2007年1月18日)。
『バイオハザード4』から2年足らずの間に『ギアーズ・オブ・ウォー』という非常に良質なフォロワータイトルが出たことで、TPSとビハインドビューという形式はよりポピュラーな存在になるのだが、ビハインドビュー以後のTPS界隈を検証する前に、ちょっと時間を巻き戻してビハインドビュー以前のTPSを振り返ってみよう。
ビハインドビュー以前のTPS
ビハインドビュー以前のTPSとは主に以下のようなものだった。
これらの映像を見てもらえばわかるように、画面の中心にキャラクターと照準を配置し、キャラクターとの距離もある程度確保した上で、キャラクターの操作と照準の操作の両方を行うという形がポピュラーな形式だった。
しかし、この形式では、キャラクターと照準と目標が一直線に並ぶことでプレイヤーキャラクターと敵キャラクターが被るという、かなり致命的な問題を抱えることになる。TPSがFPSに比べるとマイナーな形式だったのは、このような根本的な問題を抱えていたことが非常に大きいと僕は考える。
この問題に対して『レッドデッドリボルバー』では微妙にキャラクターと照準をズラして解決を図ったり、『地球防衛軍』では敵キャラクターを巨大にすることで自分と被ったところで特に問題無くするという形での対処をしている。
まあ何て言うか、こうやって昔のTPSの映像を見ていると改めて思うが、全体的に臨場感に乏しい。例外的なのは圧倒的に敵キャラクターがデカい『地球防衛軍』くらいだろうか。この臨場感の欠如はおそらくカメラとキャラクターの距離が離れ過ぎていることに起因する。
FPSがその形式の時点で3Dゲームにおける様々な問題点を解決しているのに比べると、TPSというジャンルは根っこに問題を抱えているジャンルだったのである。それがビハインドビューの登場によってそれらの問題が劇的な形で解決し…という前に、もうちょっとビハインドビューに至る道について振り返ってみよう。
ビハインドビューのルーツ
ビハインドビューについて色々調べると結構歴史が古いことがわかる。
この手の形式的な類似性って探せばあるもんで、面白いっちゃあ面白い。でもまあこの辺のタイトルが『バイオ4』に影響与えたかどうかみたいな検証は非常に難しい。
比較的『バイオハザード4』と同時代でビハインドビューの布石になったんじゃないかと個人的に睨んでいるのは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』と『マリオサンシャイン』だったりする。
時のオカリナは通常時のアクションから弓やパチンコで狙う際の3人称視点と主観視点の切り替えの流れにプロトタイプ感をすごく感じる。時のオカリナを初めてやった時はなんつうやり辛い仕様だと思ったし、Z注目無ければ途中で投げてたかもしれないとすら思ったけど、慣れるとすごく合理的な仕様に思えたものである。
次のマリオサンシャインについては、僕も最近気づいたんだけど、画面の片方に自分のキャラクターを寄せて対象と向き合うっていう形式が凄く似ている。当時バイオ4の制作者の三上真治氏は電撃的な形でバイオハザードシリーズをソニーハードから任天堂ハードに移籍させたり、任天堂のゲームに対するリスペクトを色んなところで語ってたりしたんで、まったく意識してないわけなないだろうと思うんだけど、一度質問できる機会があったら是非とも聞いてみたい。
あとこれは影響関係って意味では全く関係ないと思うんだけど、ビハインドビューの自分の右肩越しに敵キャラクターを配置するレイアウトってポケモンに凄く似てる。そして影響関係はまず無いんだろうけど、ポケモンもバイオ4も全く違うジャンルでありながら、似通ったレイアウトのゲームになっているのは、この2つのタイトルが本質的な部分で通じている部分があるからだと僕は考えている。
ビハインドビュー以後のTPS
そんなこんなでビハインドビューという形式が世にでるわけだが、ここではこの形式を採用したタイトルを幾つか挙げながらそれぞれ内容を吟味してみよう。
『デッドスペース』
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個人的に『バイオハザード4』の続編だと思っている本作、カバーアクションを採用しないことで、剥き身の己の身体を晒し続けることでホラーゲームとして傑作になった。
『アランウェイク』
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光を使った戦闘が新鮮な本作。『デッドスペース』もそうなんだけど、カバーアクションを採用しないことで、頼りない身体性がより際立つ結果になっているのは興味深い。カバーアクションを採用した『ギアーズ・オブ・ウォー』をTPSの転換点として捉えてしまうと、カバーアクションを採用しないことが魅力の一つになっている『デッドスペース』や『アランウェイク』を見落とすことになる。
『デッドスペース3』は…。知りません。
開発会社が違うとは言え、全然違うゲームみたい…。やっぱカメラとキャラクターの距離が縮まることで「臨場感」がけた違いに向上していることが、2つの動画を見比べるとわかるのではないかと思う。
『GTA4』
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『レッド・デッド・リデンプション』
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上記の4つ何れも射撃がメインのゲームではない、このようなゲームに対しても問題無く採用出来る汎用性の高さがビハインドビューとカバーアクションの優れたポイントである。
ビハインドビューが描いたもの
ビハインドビューとその欠点を見事に補強するカバーアクションによってTPSは変わった。
このカメラ制御システムはFPS的な臨場感と直観性を併せ持つ射撃システムを持ちながら、三人称でキャラクターを画面内に視認することでプレイヤーの身体感覚も維持出来るという一人称視点と三人称視点のゲームの良いとこ取りのシステムだった。
そして、ビハインドビューは三人称ゲームに「部分的に」採用することが可能なシステムでもある。そのため、シューティングメインのゲームではなく、「部分的に」シューティング要素のあるゲームにもバンバン採用された。その結果、現状のTPSシーンに留まらず、三人称型の3Dゲームに標準的に用いられるシステムとなった。
端的に言ってしまえば、ビハインドビューは、自分とその向かい合う相手との「関係性」を画面の中央に描き出すことに成功したシステムなのではないかと思う。今となっては疑問を抱く人すらいなくなりつつある、自分の操作するキャラクターを画面の片方に寄せてしまうという大胆な画面構成によって、より具体的な形で己の分身と対象との「関係性」を一つの画面の中に描いたことが、このシステムの功績だったのだ。
以下にその「関係性」を最も端的且つ美しく表現した作品の画像を挙げる。
主観視点で得られる「臨場」と客観視点だから描ける対象との「関係性」、この2点の両立が可能になることで、ゲームの表現はまた一つ豊かになった。
最後に『バイオハザード4』で最高に輝いていたアイツの動画で終わりにしよう。
いやービハインドビューって本当にいいものですね!