なぜマリオはBボタンでダッシュするのか?

 Bダッシュの意味 - 枯れた知識の水平思考
↑この記事のコメント欄で話題になっていることについて、自分なりに思うところもあるので、ブログ主らしく、新しく記事を書いて誘導してみます。


 まず、自分もマリオのダッシュはレバーを二回入力して行うというのは、あり得ないと考えます。ま、でもそれは、Tobishima氏自身が述べられているように、発生に若干のタイムラグと、目測の狂いが生じるからなんですよね。スーパーマリオという一ドット単位まで突き詰めて練り上げられた精妙なステージ設計が肝のゲームにおいて、そのようなラグや、目測の狂いは致命的ですから。そういうわけで、自分もマリオというゲームにレバー二回入力ダッシュはあり得ないという考えを支持します。


 でもそれだけでは答えの半分にしかなってません。なぜ、マリオというゲームは、Bボタンを押すことでダッシュするようになったのか?決して直感的とは言い難い、Bダッシュという操作はなぜ誕生したのか?


 その最大の理由を俺は、ファミコンのコントローラーに求めます。


 ファミコンのコントローラーは、十字キーを搭載した、自分の手で持って操作するインターフェースです。ですから、レバー二回入力のような、一瞬、キーから手が離れるような操作にはあまり向いていないんです。そして、それは、右や左へ、一瞬にして切り返すアクションをするマリオというゲームにも言えます。


 マリオというゲームほど、右手でコントローラをガッチリ固定する必要性のあるゲームは無いんです。



 ゲーセンのレバーやボタンですと、そもそもコントローラーを手でガッチリ固定する必要性がそもものが無いんです。なぜならゲーセンのレバーやボタンは、筐体に付属する形で、既に固定されているから。


 もうおわかりでしょうか?あなたが、左手で、マリオを右へ左へ操作している時、あなたの右手はガッチリコントローラを固定しています。Bボタンを押しながら。


 Bダッシュという操作は、ただ押し続けるだけで良いという画期的なボタン操作なんです。下手なゲームクリエイターだと、そこに余計な要素、Bボタンを連打すると、より速くなるみたいな部分を付け加えてしまったりするんですが、宮本茂は、Bダッシュにおいて、Bボタンを押しつづけるという行為自体にコントローラーの固定という、大きな意味があると、完全に確信してたとまでは言いませんが、おぼろげながら気付いていたのではないかと俺には思えるんです。



 そして、両手に力をこめて、マリオ自身に力を注入するかのような、Bダッシュの操作方法は、マリオというキャラクターを操作する上で、直感的ではないですが(そもそも足の操作を手でやるって時点で無理がある)、非常に体感的な操作方法になっています。宮本茂という人は、こういう生理的な操作感触に凄くこだわる人です。


 両手にグッと力を込めてマリオをダッシュさせ、タイミングを見計らってAボタンを押し、エイヤッとジャンプする。マリオをプレイしたことがあるなら、だれしも経験があるだろうこの、助走からの跳躍へと到る、美しい流れ。その最初のステップである、「助走」という動作を、Bダッシュという操作方法は、これ以上なく鮮やかにデザインしているのだと、俺は思うんです。


 そして、Bダッシュをデザインした宮本茂自身がが、GC時代に受けたインタビューで、マリオのBダッシュについて、「あれはいらない操作方法だったかも」みたいなことを語っていた理由も今ならわかります。


 Bダッシュは、両手を固定することが要の操作です。


 もう説明いらないですよね。Bダッシュというスーパーマリオブラザーズを伝説的な傑作にした操作方法にすら疑問を呈すること、つまり、プレイヤーの両手を自由にするという発想から生まれたコントローラーが、Wiiリモコンなのです。

補足

 以上述べたファミコンのコントローラに最適な体感操作ということ以外にも、理由はある。当時のゲームシーンの潮流だった、レバー(十字キー)+二つのボタンという操作系の流れの中の一つとして、スーパーマリオというゲームもおそらくは存在する。それを語るためには、前段として、ゼビウスくらいは触れないといけず、それやってる長くなるのでまた今度。